感動と悲劇の山岳ドラマをレビュー!映画「八甲田山」での尿のシーンの真実:怖すぎる八甲田山雪中行軍遭難事件

当ページのリンクには広告が含まれています。
  • URLをコピーしました!

八甲田で見た事は、一切、喋ってはならぬ!

(映画「八甲田山」公開当時のポスターより)

これは名作映画「八甲田山」の惹句(映画を宣伝するためのキャッチフレーズ)です。八甲田山で一体何が起こったんだろう?とこの映画を知らない方は気になりますよね。

ここでは、長年にわたり人々を魅了する名作「八甲田山」とは何か、その魅力を探っていきたいと思います。

雪の八甲田山
目次

映画「八甲田山」とは?

映画「八甲田山」は新田次郎さんの小説「八甲田山 死の彷徨」を原作とした1977年に公開された映画です。

製作:橋本プロダクション・東宝映画・シナノ企画。

監督:森谷司郎さん 脚本:橋本忍さん 撮影:木村大作さん 音楽:芥川也寸志さん

出演は高倉健さん、北大路欣也さん、三國連太郎さん、など日本を代表する名だたる俳優さんが名を連ねています。

そもそもこの映画の原作の元となったのは1902年(明治35年)に実際に起こった青森の軍隊の遭難事件(八甲田雪中行軍遭難事件)。

この事件で雪中行軍の演習中に参加者210名中、199名が死亡しており、これは世界でも類を見ない大規模な雪山遭難事故となっています。

青森にはこの遭難事故にまつわる資料を展示した「八甲田山雪中行軍遭難資料館」がありますが、現在では日本で過去にこのような大規模な遭難事故が起こったことすら知らない方も多いのではないかと思います。

映画は実際に極寒の雪山で撮影し、完成までに3年もかかった超大作で、現在も根強いファンがたくさんいます。

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫) 文庫 – 1978/2/1

歴史的背景を知ろう!大遭難事件を描いた「八甲田山」映画のストーリー紹介

映画は雄大で紅葉鮮やかな八甲田山の空撮から始まります。そしてタイトルとともに映画「八甲田山」のテーマ曲。

時は明治三十四年十月。弘前の第四旅団司令部の会議室。

日本とロシアとの関係が悪化し、いつ開戦してもおかしくない状況。日本軍はその開戦に向けて兵器の充実、兵の教育を進めていたが、それでも日本には明らかに不足しているものがあった。それは寒地訓練、寒地装備。

予想される戦場は遼東半島から満州(ともに中国)にかけて。日本には、この六年前に日清戦争で遼東半島で寒さのために四千名もの凍傷者を出し、軍の作戦に大きな支障をきたした過去があった。

だが今度戦う相手はシベリアの寒さに耐えうる装備と、極寒零下数十度の寒さでも戦うことを習得しているロシア軍。

日清戦争の教訓を元に、また来るべきロシア軍との戦いのために、極寒に耐えうる装備と兵の教育は日本にとって急務であった。

また、本州北沿を守る第八師団にはもう一つ課題があった。

開戦した場合、いち早いロシア軍の攻撃で津軽海峡と陸奥湾の封鎖が予想される。その際に艦砲射撃により青森沿岸の鉄道や道路を破壊されたら、青森と八戸、青森と弘前が遮断され、日本海側と太平洋側の交通が不可能になってしまう。そうなった場合、双方の往来には八甲田山系を縦断するしか道がなかった。

しかしこの八甲田山に冬の交通路が設定できるかが不明であり、冬季の厳寒、軍の移動や一般物資の運搬が可能かどうか、可能にするにはどうすればよいかを調べる必要がある。

以上の観点から、「八甲田山を踏破し、雪とは何か、寒さとは何かを調べてほしい。雪の八甲田を歩いてみようとは思わないか?」と上官よりその任務を提案されたのが、弘前・歩兵第三十一連隊の徳島大尉(高倉健さん)、青森・歩兵第五連隊の神田大尉(北大路欣也さん)であった。

この二つの連隊はその任務を受け別々のルートで八甲田山雪中行軍に挑むことになるが、会議後のそれぞれの上官同士のふとした会話から、雪の八甲田山ですれ違うことになる-。

悲劇はここから始まります。

八甲田山 HDリマスター (完全初回生産限定:復元台本付き) [Blu-ray]

「八甲田山」のキャスト&キャラクター紹介!豪華キャストが織り成す人間ドラマとは?

この映画「八甲田山」には名優が多数出演されており、まさにオールスターキャストと呼ぶにふさわしい豪華なキャストとなっています。

その一部をご紹介します。

弘前・歩兵第三十一連隊の徳島大尉:高倉健さん

弘前からのルートを踏破する歩兵隊の責任者、徳島大尉。実直で上官を前に物おじせず自身の心情をはっきりと言える。それでいて民間人の案内役に敬意を表たり、隊員はもとより、雪中行軍前にたった一度酒を酌み交わした同じ立場の神田大尉に行軍中も思いを馳せる優しい人物。途中悲劇的な場面で、部下よりある選択を迫られるも隊員の安全を第一に冷静な判断を下し、雪中行軍を成功へと導く。

まさに高倉健さんなくしてはありえないキャストだと思います。

当時古巣の東映を飛び出したばかりの高倉健さんは、長期ロケが必要なこの映画に、私財をなげうって専念したそうです。

青森・歩兵第五連隊の神田大尉:北大路欣也さん

青森からのルートを踏破する歩兵隊の責任者、神田大尉。まじめですべての人にやさしく、その人格から多くの部下に信頼されている。自分の意見があっても上官の指示には従うべき、と規律を遵守する軍人として立派に行動する。雪中行軍の辛い時には「春の花や夏の山の緑などを思い出す」と日本の自然や情景を愛する人物。

北大路欣也さんは当時三十一歳ぐらいだったそうです。

現在知らない方も多いと思いますが、北大路欣也さんのお父さんは俳優の市川右太衛門さん。高倉健さんとの初対面は北大路欣也さんが十四歳ぐらいの時だったそうですが、その時すでに高倉健さんと市川右太衛門は知り合いだったそうです。

初対面以降も高倉健さんと北大路欣也さんの交流は続き、北大路欣也さんが三十歳前に高倉健さんにアスレチックジムへ連れていかれ厳しい訓練を受けたそうです。北大路欣也さんはこの時、「これから何かあるのかな?」と思ったそうですが、数年後にこの映画の出演が決まり、撮影後、脚本家の橋本忍さんから、高倉健さんが北大路欣也さんを選んだことを知ります。神田大尉の役も北大路欣也さん以外ありえません。

北大路欣也さんは大俳優でありながらこの映画の4Kリマスター版の完成上映イベントで、「素晴らしい作品に出演させていただいた」とたいへん謙虚なコメントを述べられています。

第二大隊長 山田 正太郎少佐:三國連太郎さん

神田大尉の上官。弘前大三十一連隊の雪中行軍に対抗心を燃やし、神田大尉にあらゆる指示を出す。この映画の重要な人物の一人です。多少乱暴で、自分の信念のもと行動する、という演技ではこの方が一番でしょう。

倉田大尉:加山雄三さん

青森第五連隊の雪中行軍に参加。行軍中、神田大尉にアドバイスしたり戒めたりする一方、上官である山田少佐にもひるむことなく進言する。危機的状況になっても冷静沈着で、神田大尉が行軍のリーダーとしてその舵取りに専念できるよう的確にアシストする。非常に頼りになる存在です。

村山伍長:緒形拳さん

大五連隊所属。極寒の地の過ごし方について知識が豊富で、随所で仲間に助言したり時には介助したりもする。信頼する神田大尉の指揮のもと雪中行軍に参加していたがー。

斉藤伍長:前田吟さん

弘前第三十一連隊の歩測担当として雪中行軍に参加するが、青森第五連隊の行軍部隊に弟が参加している。雪の恐ろしさを知っているが故に弟が雪中行軍に参加するのを当初から反対し、行軍中も常に弟の身を案ずる。行軍中、弟を思うあまり徳島大尉にあるお願いをするー。

他にも日本を代表する俳優がこれでもか!と出演しています。

八甲田山 HDリマスター (完全初回生産限定:復元台本付き) [Blu-ray]

ここに注目!大五連隊と第三十一連隊の雪中行軍はここが違う!

別々なルートで八甲田山踏破に挑んだ二つの連隊。ですがこの二つの連隊、コース以外でもいろいろな違いがあって、対比してみると非常に興味深いんです。

以下の点に注目してみてください。そしてそれがどのような経緯を経て決定し、どのような顛末を迎えるのか。それがこの映画の大きな見どころの一つです。

  • 参加者の人選
  • 参加人数
  • 日数
  • 装備
  • 案内人の有無
  • 指揮系統

「八甲田山」の感動的な音楽に耳を傾けよう!

映画音楽は映画の印象を大きく左右する非常に大きな役割を担っています。

八甲田山の音楽の担当の芥川也寸志さんは、映画音楽に限らず舞台やテレビ、CM音楽や社歌など驚くほど広いジャンルで活躍されていた名作曲家です。

この映画のテーマ曲は雄大な八甲田山を連想させつつ哀しさも漂う名曲で、この音楽を聴くだけで映画のシーンがよみがえってきます。

八甲田山の音楽は翌1978年の第1回日本アカデミー賞音楽賞を受賞しています。

「八甲田山」映画の舞台となった出来事について

前述の通り、八甲田山は明治時代に起こった実際の遭難事件を題材にしています。

小説版、映画共にモデルとなった人物もおられますが、史実とは異なった点も多く、決してこの映画=真実ではありません。

生存者が少ないことに加え、案内人を請け負った一般人に至るまであらゆる関係者にかん口令が敷かれたことから、現在に至っても明らかになっていない点も多いとのことです。

映画「八甲田山」と実際の事件の違いは、ストーリーテリングやドラマの演出、時間制約などの要素によって生じます。映画は実際の事件をベースにしながらも、視覚的な魅力や物語の展開を追求するために一部の変更や誇張が加えられることが一般的ですので、その点には注意が必要です。

映画「八甲田山」の名シーン

この映画は全編名シーンと言えるほど見どころがたくさんで、どのシーンを挙げるかは難しいですし個人的な好みでもわかれるところですが、数か所だけ簡単に挙げてみます。

冒頭の雪中行軍が決定する会議室

悲劇的な遭難がどのような経緯で起こったのか?その出発点となる重要なシーンです。

徳島大尉と神田大尉がそれぞれの行軍の計画立案前に酒を酌み交わす

この映画のテーマの一つ、徳島大尉と神田大尉の絆が生まれる名シーンです。

ちなみにここで高倉健さん扮する徳島大尉が唄うのは青森県民謡の「弥三郎節」。特にこのシーンでフィーチャーされるのはその六番の歌詞。上司の無理な命令に苦労する、という内容ですが、いつの時代も同じなんですねぇ。

雪中行軍前の予備演習

青森第五連隊は来るべき本番に備え、予備演習を行います。この予備演習の結果が本番に大きく影響することになります。

狂いだす歯車

詳細は話せませんが、雪中行軍は計画当初から暗雲が立ち込めます。徐々に悲劇へと向かう様々なシーンからは目が離せません。

大隊本部が異変に気付くシーン

大隊本部は経由地点からの到着の連絡に安堵しますが、計画書との矛盾に気付き再度確認の電話を入れます。

徳島大尉と神田大尉の最後のシーン

徳島大尉と神田大尉の最後のシーンはこの映画のハイライトです。

エンディング前の字幕

雪中行軍について語られますが、これを読むとたいへん切なくなります。内容はぜひご自身の目でお確かめください。

名シーンの裏側を知る!「八甲田山」映画の撮影舞台裏レポー

前述の徳島大尉と神田大尉の最後のシーン。極寒の中長時間待っていた北大路欣也さんと対面した高倉健さんが、セリフがあるにもかかわらず、感極まって絶句してしまったそうです。ですがそれがあまりにもリアルでそのままOKとなったのだそうです。

監督の手腕が光る!「八甲田山」映画の演出について考察

この映画を制作するにあたり、監督が「この映画は本物の雪山で撮らなきゃ意味がない」とリアルさにこだわったそうです。当然当時はCGなども存在せず、猛吹雪も実写で、わざわざ吹雪が起こるのを待って撮影されたというから驚きです。この映画の撮影は過酷を極め、逃げ出した俳優もいた、という逸話があるのもうなずけます。そのような撮影手法から完成までに3年を要しますが、だからこそリアルな作品に仕上がっており、それが観客をスクリーンに釘付けにしたのだと思います。

さらに青森第五連隊は210名。随所にその大部隊の行軍の様子が映し出されますが、その中には北大路欣也さんや三國連太郎さん、加山雄三さんなど、主要キャストも実際に参加しておられたそうです。

そういった妥協を許さない撮影と、それに参加したからこそできる鬼気迫る迫真の演技が、観る人を魅了するのでしょう。

名台詞!流行語にもなった「天は我々を見放した…!」

この台詞は当時流行語にもなりました。困難に耐え抜いて最後まで希望を捨てなかった人物が、もう絶望しかないと悟った時に発するこの台詞に、胸が締め付けられる思いがします。その人物の立場を考えると、さぞ残念だったことでしょう。

尿のシーンの真実:人と自然の壮絶な闘争

隊員たちが次々と脱落していくシーンは、観る者の心を強く打つものとなっています。これは単に寒さや飢えによるものだけではありません。隊員たちの間の心の葛藤、誇り、責任感、絶望感が入り混じりながら展開していきます。

隊員が脱落する背景には、軍の厳格な階級制度や隊員同士の信頼関係の欠如が影響しています。また、物資の欠乏や適切な判断が下せない状況が、次第に隊員たちの精神を追い詰めていきます。映画では様々な理由で隊員たちが倒れていきますが、その中の一つ、尿をするシーンについて考察します。

行軍の最中ある隊員が立ち止まり、叫びながら尿失禁をしてしまいそのまま卒倒してしまいます。
このシーンにはどのような意味があるのでしょうか。

八甲田雪中行軍遭難事件は、自然の厳しさと人間の身体の限界を強く印象付ける出来事でした。遭難の背景には、過酷な寒冷環境下でのさまざまな行動が大きなリスクをもたらすことが考えられます。

日常の行動とリスク
一見、日常的な行動である排尿も、寒冷地では命に関わるリスクが伴います。以下の要因がそのリスクを高める要因として考えられます。

  1. 排尿と体温の関連性
    • 露出部分の冷え:排尿時の陰部の露出は、その部分を冷やすリスクがあります。直接的に体温を大きく下げる要因とはなりにくいものの、繰り返しの露出は体温を奪う要因となり得ます。
    • 尿の放出による体温の低下:尿は体温を持っており、その排出によって体から熱を失います。この体温の低下が、低体温症のリスクを高める要因となります。
  2. 湿度と冷えの関係
    尿を服の上からしてしまう場合、その部分が湿ってしまい、湿った衣服は体温の低下を促進します。湿気は熱伝導を促進し、体温を迅速に奪うため、湿った状態は極端な冷えの原因となります。さらに極寒の八甲田山では尿は一瞬にして氷となり、急激に体温を奪ったものと考えられます(類似したシーンで同行した軍医がそう判断する場面があります)。
  3. 飢餓や疲労と体温低下の関係
    極端な寒さや飢餓状態での行動は、体の運動能力や判断力の低下を招く可能性があります。このような状況下での排尿の動きの停滞や判断ミスは、さらなる体温の低下や危険な状況を引き起こすリスクが高まります。

このように、寒冷地での行動には多くのリスクが伴います。尿をするという日常的な行動も、過酷な環境下では命に関わるリスクを増大させる要因となることがあるのです。普段と同じ行動ができない、普段と同じ行動が文字通り命取りになりかねない。八甲田の遭難事件を通じて、自然の厳しさや、人間の身体の限界を再認識させられるエピソードと言えるでしょう。

ほかにも様々な理由で倒れていきますが、それはぜひ映画でご確認ください。

八甲田山 HDリマスター (完全初回生産限定:復元台本付き) [Blu-ray]

企業の研修やリーダーシップトレーニングの教材に使われる、映画「八甲田山」

人々を魅了する映画「八甲田山」。実は企業の研修やリーダーシップトレーニングなどで使用されることがあります。この映画では、困難な状況下でのチームワークやリーダーシップ、危機管理などのテーマを描いており、そうした要素を学ぶための教材として有効であるといえます。

この映画の鑑賞後にディスカッションやグループワークを行うことで、参加者同士の意見交換やアイデアの共有が促され、ビジネス環境におけるリーダーシップやチームワークに関する洞察を深めることができます。

最後に

いかがでしたでしょうか。映画「八甲田山」にはまだまだたくさんのエピソードがあり、簡単には語りつくせません。現在では到底実現不可能な撮影方法と、それに命懸けで臨んだ出演者やスタッフたち。その圧倒的迫力をぜひご自分の目で確かめてください。

私も自宅のハードディスクに保存し、すでに数えきれないほど視聴しています。何度見ても飽きない。何度見ても感動する。人生でこの作品に出合えて本当に良かったと思っています。

この映画は、人間の持つ様々な感情や心の闘争を、リアルかつ感情豊かに描写しています。それは時に痛烈で、時に悲しいものとなります。しかし、その中には隊員たちの絆や互いの思いやりも垣間見え、人の持つ美しさや強さも感じられます。

最後に、この映画を通して、自然の前に立つとき、人はどれほど小さな存在であるのか、そして人としてどのような選択をすべきなのかを改めて考えさせられました。

映画「八甲田山」は、若い世代にも是非見ていただきたい、そして後世に語り継いでいきたい名作です。

八甲田山 HDリマスター (完全初回生産限定:復元台本付き) [Blu-ray]
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次