本記事では、テレビ番組「イット!」の特集【しらべてみたら】から「危険横断はなぜ無くならない?開かずの踏切」を取り上げます。
番組では、川崎市のJR南武線平間駅や鹿島田駅、そして隣の矢向駅周辺にある「開かずの踏切」で発生している危険な状況を調査しました。
通勤・通学時間帯に頻発する長時間の遮断による混雑や、無謀な横断の背景、また安全対策の課題について詳しく解説します。
危険横断が多発する「開かずの踏切」:神奈川県川崎市JR南武線平間駅の現状
「無謀横断多発」の平間駅踏切の実態
神奈川県川崎市のJR南武線平間駅近くにある踏切は、朝の通勤・通学時間帯に「開かずの踏切」となり、多くの人々が立ち往生しています。
踏切付近には「無謀横断多発」と書かれた看板も設置されており、無謀な横断が頻発する危険な状況です。
7時50分以降から「開かずの踏切」に
この踏切は朝7時50分を過ぎると長時間閉じたままとなり、開くまでに5分から10分待つこともあります。
一度閉まると再び開くまでの時間が長く、頻繁に閉まることで踏切周辺には大勢の人が集まり、混雑が発生しています。
危険な横断が相次ぐ理由
長時間開かず、いつ開くかわからない状態に多くの人がしびれを切らして、無謀な横断を繰り返しているのが現状です。
7時半を過ぎると踏切前に大勢の人が並び、遮断棒が上がった瞬間に一気に渡り始めます。
さらに、警報音が鳴っても遮断棒が下がるまでに渡ろうとする人が多く、遮断棒が下がる瞬間にくぐって出ていく人や、電車が通過した直後に踏切内に侵入する人も見られます。
実際に「開かずの踏切」の状況を調査
ある時間帯に番組取材班が踏切が閉じている時間を測定したところ、電車が1本、2本通過しても開かず、5分37秒後にようやく開いたという結果が出ました。
時間によっては、開くまでの時間が長いだけでなく、開いた後もわずか5秒ほどで再び警報音が鳴り始めるため、利用者が踏切内に取り残される危険な状況が続いています。
「すぐ閉まる」ことが横断のリスクを増大させている
この踏切では、遮断棒が完全に上がりきる前に警報音が鳴ることがあり、せっかく開いたと思ってもすぐに再び遮断されてしまいます。
そのため、多くの利用者が踏切内で取り残されるリスクにさらされ、危険な横断を強いられる状況です。
「すぐ閉まってしまう」「何度も繰り返し閉まる」という利用者からの不満の声が多く上がっています。
近くの迂回路 – 時間のかかる遠回り
この踏切には200メートルほど離れた場所に歩道橋があり、線路を迂回して反対側の駅入口に行くことも可能です。
しかし、歩道橋を使って迂回するには4分36秒もかかります。
通勤・通学の忙しい時間帯にとっては遠回りに感じられ、利用者の多くが「階段があっても遠いため、あまり使わない」と述べています。
JR東日本の対応 – 警報音のタイミング調整
こうした状況に対して、JR東日本は「警報音が鳴るタイミングを変えることで、踏切の遮断時間を最適化している」としています。
また、「警報音が鳴り始めたら無理な横断は避け、踏切内には立ち入らないよう」呼びかけていますが、根本的な改善が期待される中で利用者の危険な横断が絶えない状況が続いています。
川崎市のJR南武線平間駅付近の踏切では、依然として長時間の遮断と頻発する無謀な横断が課題となっています。
全国で進む開かずの踏切対策 – 高架化と廃止計画の現状
開かずの踏切が減少 – 東小金井駅の成功事例
近年、長時間閉じたままで危険な「開かずの踏切」は、全国的に減少しています。
その代表例の一つが、JR中央線の東小金井駅近くにあった踏切です。
この踏切は、2003年に1時間も閉じたままで、多くの自転車や車が立ち往生する映像が記録されています。
しかし、現在では中央線の高架化が進み、この踏切は廃止されました。
利用者からも「利便性が上がってよかった」「本当に助かった」との声が上がっています。
小田急線下北沢駅でも地下化が完了
東小金井駅に続き、2013年には小田急線下北沢駅が地下駅となり、踏切が撤去されました。
このように、開かずの踏切の解消に向けた取り組みが各地で進んでいますが、いまだに高架化を待つ踏切も少なくありません。
JR南武線の鹿島田駅 – 開かずの踏切解消への取り組み
JR南武線の鹿島田駅前にも開かずの踏切が存在し、現在高架化計画が進行中です。
踏切の横には歩道橋があり、歩行者は踏切を渡らずに駅へ向かうことも可能ですが、それでも高架化が進められている理由には、頻発する無謀な横断の問題があります。
自転車による無謀な横断
この踏切では、警報音が鳴っているにもかかわらず、自転車が次々と踏切を横断する危険な状況が見られます。
取材によると、朝の時間帯には、踏切が最長で9分22秒も閉じたままとなることがあり、踏切が一度開くと多くの人が一斉に渡り始めますが、警報音が鳴っても次々に踏切内へ入っていくため、危険が高まっています。
踏切の遮断棒が上がりきらないうちに警報音が鳴る問題
鹿島田駅前の踏切では、遮断棒が完全に上がりきらないうちに警報音が鳴り始めることがあるため、車は踏切に入らないようにしていますが、歩行者や自転車はその間に通過してしまいます。
結果として遮断棒がすぐに下がるため、安全に渡れる時間が非常に短く、多くの人が踏切内に取り残されるリスクがあります。
取材では、遮断棒が下がる前に渡りきれず、自転車に遮断棒が直撃してしまった事例も確認されています。
利用者の声 – 高架化が求められる現状
利用者からは「遮断間隔が短く、渡るのが危険」「南武線は数分おきに電車が来るので、踏切が長く閉じていることが多い」との声が多く、急いで渡ろうとする自転車も少なくありません。
こうした状況もあり、踏切が長時間閉まることが多いため、危険な横断が増える結果となっています。
高架化計画の進捗と今後
JR東日本と川崎市は、この鹿島田駅を含む4駅間の踏切を廃止し、高架化する計画を進めています。
しかし、計画の完了予定は2039年度とまだ先であり、当面の間は危険な状況が続くことが懸念されます。
高架化が進まない開かずの踏切 – 矢向第二踏切の危険な現状
高架化されない矢向第二踏切の現状
鹿島田駅の隣に位置するJR南武線矢向駅近くに「矢向第二踏切」があります。
この踏切は他の踏切と異なり、上下線に加えて列車の止め置き用のレールも備えており、その長さは25メートル以上に及びます。
このため、南武線の踏切の中でも特に距離が長く、渡りきるのに約10秒かかるため、歩行者が安全に渡りきるまでの余裕がありません。
長い踏切距離と危険な横断の実態
矢向第二踏切では、距離が長いために遮断棒が上がっても渡りきれない人が多く、警報音が鳴り始めると遮断棒がすぐに降り始め、危険な状態が頻発しています。
番組では、以下のような危険なケースも記録されました。
- 雨の日に傘が遮断棒に引っかかってしまう。
- 遮断棒をくぐろうとして転倒する人がいる。
- チャイルドシートが遮断棒に引っかかり、反動で後ろの人に直撃する。
長時間開かない – 待ち時間と混雑の問題
矢向第二踏切では、朝の通勤時間帯になると踏切の待ち時間が非常に長く、15分近く開かないこともあります。
例えば、朝の混雑時には4本の電車が通り過ぎても踏切は閉じたままで、5本目が過ぎた後も遮断棒が上がらないことがあるため、待っていた歩行者や自転車が諦めて歩道橋を使うこともあります。
待ちきれない利用者の行動
長時間の遮断を受けて、自転車や車の利用者は長蛇の列を作ることが多く、自転車の利用者の中には、自転車を抱えて歩道橋を渡る人も見られます。
歩道橋には階段があるため、高齢者にとっては利用が難しいことも問題です。
高齢者にとってもリスクの高い矢向第二踏切
矢向第二踏切を利用する高齢者もおられ、シルバーカーを押す高齢女性が渡り始めた際には、警報が鳴ったため渡るのを諦めて戻り、3回目に遮断棒が挙がった時にようやく渡れた、という場面が見られました。
ご本人は、「遮断棒が降り始めたら慌てず、どちらか近い方に戻るようにしている」と話し、転倒しないように慎重に横断しているとのこと。
実際の転倒事故と警察の対応
矢向第二踏切では、実際に歩行者が踏切内で転倒する危険なケースも発生しています。
ある男性が踏切を渡り終えようとした際に転倒し、周囲の人が助けを求める声を上げる中、警報音が鳴り始め遮断棒が下がり始めるという事態も発生。
警察官が駆けつけ、転倒した男性を支えながら安全に踏切の外に出すことができました。
矢向第二踏切の高架化が進まない理由
住民の中からは「線路を高架化すれば危険が解消される」「高架化を早急に進めてほしい」という声が上がっていますが、矢向第二踏切は横浜市の管轄であるため、川崎市が進める高架化計画の対象外となっています。
横浜市のコメントでは「矢向第二踏切は高架化候補に入っているが、現時点で工事の予定はない」とされており、当面の間、矢向第二踏切における危険な状況が続く見込みです。
まとめ
開かずの踏切問題は、長時間の遮断による混雑と危険な横断が深刻な課題です。
通勤・通学者や高齢者にとって安全な通行が確保されるためには、高架化の早期実現が望まれていますが、行政区分の違いなどもあり、一筋縄ではいきません。
現状、利用者の無謀な横断を防ぐため、JR東日本は警報音のタイミングの調整などの対策を取っていますが、早急なインフラ整備が期待されています。
安全な通行環境の実現には、今後も更なる改善が必要とされています。
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