従来の敬遠と、投球せずに一塁を与える申告敬遠。
名前は似ていますが、実施方法やリスク、スコアの書き方まで違いがあります。ここでは両者の差を一目でわかるように整理し、現場で迷いやすいポイントを具体例でまとめます。
目次
定義と狙いの整理
- 従来の敬遠は、投手が意図的にボール球を4球投げて打者を歩かせる作戦です。
- 申告敬遠は、守備側が球審に意図を伝えるだけで投球せずに一塁を与える制度です。
どちらも強打者回避や併殺狙いなどの戦術が背景にありますが、進行の速さとリスクの性質が異なります。
実施手順の違い
- 従来：捕手が外角高めなどに構え、4球投げる→打者一塁。
- 申告：守備側が球審へ申告→球審が故意四球を宣告→打者一塁。投球なし。
できること・できないこと
- 打席途中の実施
- 従来：可能（カウント継続で投球を重ねる）。
- 申告：可能（打席途中でも宣告で一塁付与）。
- インプレー中の実施
- 両者とも不可。プレー停止後に行います。
- 撤回
- 従来：投球後の取り消しは実質不可。
- 申告：宣告後は不可。申告前に最終確認が必要です。
走者処理と得点の扱い
- 両者とも記録は四球扱い。走者は押し出し式で進塁します。
- 満塁なら三走が生還し1点が入ります。
リスクとリターンの違い
- 従来：暴投・パスボールのリスク、カウント悪化の可能性。
- 申告：投球しないため、暴投やPBのリスクはゼロ。一方で、投球の中で様子を見る余地はありません。
- どちらも「次打者との相性」「併殺確率」「投手の制球」など複合要因で成否が決まります。
スコアの書き方（BB／IBB）
- 四球はBB、故意四球はIBBで記録します。
- 従来の敬遠でも意図が明らかな場合はIBB、申告敬遠は原則IBBとして扱います。
- 申告敬遠は投球がないため、投球数は増えません。
現場で迷いやすい場面の整理
- 満塁での申告敬遠：押し出し1点を与える代わりに併殺確率を上げる判断。投手のゴロ傾向と内野守備力を必ず確認します。
- 途中申告：打席途中であっても可。投手が投球動作に入る前に申告を完了しておくとスムーズです。
- 少年野球・独自大会：採用有無や回数制限は大会規定で異なります。要項の事前確認が安全です。
具体例で理解する三つの場面
- 場面1：一死一、二塁で四番を回避
従来の敬遠なら4球の間に二、三塁へ重盗のリスクがあります。申告敬遠は投球しないため、そのリスクを回避できます。代わりに、次打者との相性で勝負する準備が必要です。 - 場面2：八回・同点・一死三塁
申告敬遠で一、三塁（または満塁）にして併殺を取りにいく発想。ゴロを打たせやすい投手か、内野守備の安定があるかを先に確認します。 - 場面3：二死二塁・打席は左の主砲
左投手なら勝負、右投手なら申告敬遠で右打者勝負という左右マッチアップが典型です。
早見チェックリスト（宣告前の最終確認）
- 次打者・次々打者の打席左右と相性
- 投手のゴロ傾向／併殺誘発率
- 捕手の送球精度（併殺のアウト完成率に影響）
- 走者の機動力（代走投入の有無）
- 守備位置の前進or定位置（内野の深さで生還確率が変わる）
ミニケーススタディ（満塁策は得か損か）
八回裏同点、一死二塁、打席は長打率の高い四番。
- 従来の敬遠：4球の間に暴投や進塁の不確実性。
- 申告敬遠：一、二塁（または満塁）を即時に確定。併殺で無失点終了の可能性が上がる一方、押し出しのリスクも背負います。
結論は「投手の制球とゴロ傾向、内野守備の完成度」で判断します。
観戦の着眼点
- ベンチが誰から勝負したいか（次打者の走者別成績）
- 申告後の内野の守備位置と投手の球種（シンカー/ツーシームなら併殺狙い）
- 代打・代走の投入で想定が崩れていないか
小さな用語整理
- ゴロ率：被打球のうちゴロの割合。併殺確率と直結します。
- 得点期待値：その局面で平均的に入る得点。申告で満塁にすると上がることもありますが、併殺でゼロにできる見込みがあるなら選択されます。
FAQ
- どちらが安全ですか？
-
申告敬遠は投球しないため暴投やパスボールのリスクがありません。従来の敬遠は4球投げる過程でリスクが生じます。
- 途中で通常勝負に切り替えられますか？
-
従来の敬遠は投球前なら切り替え可能ですが、申告敬遠は宣告後の撤回はできません。
- 走者・得点処理は違いますか？
-
いずれも四球基準で同じです。満塁なら押し出しで1点が入ります。
まとめ
- 投球の有無とリスクの性質が最大の違い。
- 走者・得点処理とスコア記入は四球基準で共通。
- 判断の鍵は「次打者の相性」「併殺確率」「投手の制球」。状況を噛み合わせて選択するのがコツです。
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