断るだけなのに、なぜ気まずくなるのか
乾杯の声が揃ったあと、「今日は飲めないんです」と言うだけのはずなのに、空気が少し固くなることがあります。
相手の厚意を無下にしたくない気持ち、場を壊したくない不安、そして“断る=失礼”という古い常識の名残。どれも正直な心の動きだと思います。
でも、体質や事情、ライフスタイルは人それぞれです。
飲まない選択はわがままではありません。
この記事では、角を立てずに上手に断るための言い方を、場面の文脈やタイミング、表情の添え方まで含めて丁寧にお届けします。最後にコピペで使えるテンプレ集も載せています。
なぜ断りにくいのか:心理と日本的な“気まずさ”の正体
断りづらさの中心にあるのは、「相手の好意を断る罪悪感」と「集団の空気に合わせたい同調性」です。
日本の飲み会文化には“注がれた杯を受けるのが礼儀”という記憶がまだ残っています。
ですから、言葉選びを少し変えるだけで印象は大きく変わります。
否定ではなく、事情の共有。評価ではなく、選択の表明。
この二つを押さえるだけで、ほとんどの場面は穏やかに収まります。
上手な断り方5選(例文と使いどころ)
①「今日は車なんです」——反論が起きにくい“安全地帯”
もっとも角が立たない定番です。交通安全という社会的コンセンサスが背中を押してくれます。
例文:「ありがとうございます。今日は車で来ていて、ノンアルでお願いします。」
ポイント:初手に感謝、最後に“お願いします”。表情は柔らかく、声は明るく。
②「薬を飲んでいて」——健康・自己管理を理由にする
医療・健康を理由にすると、相手は深追いしません。詳細を語る必要はありません。
例文:「少し薬を飲んでいて、今はお酒を控えています。ソフトで乾杯させてください。」
ポイント:病名は言わなくて大丈夫です。代替案(ソフトで乾杯)を添えると“参加姿勢”が伝わります。
③「明日が早くて」——翌日のパフォーマンスを優先
仕事や家族行事、運転、トレーニングなど、翌日の予定を理由にします。
例文:「明日が早いので、今日は飲まずに失礼します。食事はしっかりいただきますね。」
ポイント:“断る”だけでなく“参加する部分”を強調すると、場から抜ける印象になりません。
④「今は控えているんです」——価値観としての宣言
ライフスタイルの選択として、やわらかく伝えます。
例文:「最近は体調管理でお酒を控えています。ノンアルでご一緒させてください。」
ポイント:期間限定でも恒常でもOKです。“ご一緒させてください”が関係維持の鍵です。
⑤「一杯だけで」——ゼロか百かにしない“緩衝策”
完全に断るより、最初の乾杯だけノンアル(または微アル)で合わせる選択肢です。
例文:「乾杯だけノンアルでご一緒します。以降はソフトでいきますね。」
ポイント:量のコントロールを自分で宣言します。周囲は安心して流れに戻れます。
シーン別の言い回しと段取り(上司・同僚・取引先・友人・初対面)
上司・年長者がいる席で
例文:「お心遣い、ありがとうございます。今日は控えておりますので、ノンアルで失礼します。」
“ありがとうございます”と“失礼します”の二段で、礼節を保ちます。注がれたグラスには手を添え、笑顔で下げる動作が有効です。
同僚・チームメンバーと
例文:「今日はソフトでいきます。料理はがっつりいきたいので、乾杯はノンアルでお願いします。」
場を盛り上げる言葉(料理の話題)を添えると、“場に参加している”ことが伝わります。
取引先・社外の会食
例文:「本日は運転の予定がございますので、ノンアルでご一緒させてください。」
淡々と簡潔に。上座への配慮と、乾杯の姿勢を崩さないことが大切です。
友人・プライベート
例文:「今日は飲まないデーにしてる。ソフトで乾杯させて!」
軽いトーンでOKです。“また飲む日もある”と柔らかく未来につなげても良いです。
初対面が多い会
例文:「今日はノンアルで失礼します。乾杯はご一緒させてください。」
自己紹介の一部として先に宣言すると、その後の勧めを受けにくくなります。
タイミングと非言語のコツ:言葉以外が7割を占めます
断りの言葉は、乾杯前や一杯目の注文時に早めに伝えるのが最善です。
会計直前の「実は…」は場の空気が固くなりがちです。
伝えるときは笑顔・うなずき・相手の目線を意識します。
手元は“注がれたグラスに軽く触れてから下げる”“空のグラスを顔の高さに上げて乾杯に参加する”など、参加のジェスチャーを添えると角が立ちません。
勧められ続けるときの“セカンドフレーズ”
最初に断っても、好意でおすすめが続くことはあります。
そんなときは、同じ文言を短く繰り返すのが有効です。
例:「今日は車で、すみません」「本日、薬があって…ありがとうございます」
説明を足すより、最初の理由を丁寧に反復するほうが、場は穏やかに収束します。
幹事や周囲にかけてもらえると助かるひと言(周囲の配慮)
- 「乾杯は各自のドリンクで大丈夫です」
- 「お酒は飲む人・飲まない人それぞれのペースで」
- 「ノンアルも種類ありますよ」
幹事が最初にこうした空気を作ってくれると、断る側も断られる側も安心します。全員が気持ちよく過ごすための場づくりは、会の質そのものを上げます。
断った“あと”を良くする、小さな心がけ
断った直後に話題を料理・仕事・趣味へ自然に戻すと、場は元の滑らかさに戻ります。
会の終わりには「今日はお誘いありがとうございました。次はランチでも」と次の提案で締めると、関係はむしろ温かく保たれます。
断ることは関係を切ることではなく、自分と相手の双方を大切にする選択です。
コピペで使える・状況別テンプレ集
- 最初の乾杯前:「今日は車なのでノンアルでお願いします。乾杯はご一緒させてください。」
- 勧められた瞬間:「お気持ちうれしいです。でも本日控えておりまして、ソフトで失礼します。」
- 上司・年長者へ:「お心遣いありがとうございます。今日は健康管理で控えておりますので、ノンアルでいただきます。」
- 友人に軽く:「今日は飲まないデー!ソフトで乾杯させて〜。」
- 初対面の場:「本日はノンアルで失礼します。よろしくお願いします。」
- 2回目の勧め:「ありがとうございます。今日は車で…すみません、ノンアルでお願いします。」
まとめ:断ることは、相手を否定することではありません
「飲まない」という選択は、あなたの身体と生活を守る大切な意思表示です。感謝→事情→代替(ノンアルで乾杯)という順番でやわらかく伝えれば、ほとんどの場は丸く収まります。
大切なのは、断ることで場から降りるのではなく、自分のスタイルで場に参加し続けることです。
あなたが今夜、少しだけ言葉を整えてみるだけで、その会はもっとやさしい場になります。

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